【xtech系:決済は社会のインフラである〜キャッシュレス決済の普及で日本経済活性化〜】
▼記事
https://toyokeizai.net/articles/-/225934
▼記事の内容
・政府もキャッシュレス決済の普及を後押し
・「未来投資戦略2017」において、27年6月までの今後10年間で、クレジットカード、デビットカード、電子マネーによるキャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す
・ITと金融を融合する「フィンテック」をはじめ、キャッシュレス決済の利便性を高めるテクノロジーの推進、人口減少社会下における業務効率化、ビッグデータの利活用なども掲げられている
・キャッシュレス化が1%進むと、GDP(国内総生産)が各国平均で0.1%増え、日本でも0.04%増加する
・キャッシュレス決済の普及のためには、スマートシティ化なども含め、国全体でキャッシュレス決済が利用しやすいインフラ整備や制度なども必要
▼「未来投資戦略2017」とは?
IoTやビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミーなどのイノベーションをあらゆる産業や社会生活に取り入れ、さまざまな社会課題を解決する「Society 5.0」の実現に向けた政府施策。
▼「Society 5.0」とは?
具体的なプロジェクトを推進する五つの戦略分野のこと。
健康寿命の延伸
移動革命の実現
サプライチェーンの次世代化
快適なインフラ・まちづくり
FinTech
▼分析
「日本は国際比較が可能な15年現在の非現金決済の割合が18%で、韓国(89%)の4分の1の水準にすぎない。中国(60%)、英国(55%)などと比べても大きく遅れている。16年でも非現金決済の割合は20%にとどまっており、27年までに現金以外の支払い率を40%に高めるという政府目標の達成に赤信号がともっている」と指摘した。
いち早くキャッシュレス社会を実現した先進国は北欧で、スウェーデン、ノルウェー、デンマークはいずれもGDPに対する現金の使用比率が5%を下回る。スウェーデンに至っては現金使用率2%。つまりキャッシュレス率が98%で、決済現場で現金はほとんど使われないのだ。ではスウェーデンの人々が何で決済しているかといえば、クレジットカードや、「Swish(スウィッシュ)」などのスマホのモバイル決済アプリだ。「Swish」はスウェーデンの6つの主要銀行が共同開発した決済システムで、携帯電話の番号と個人認証だけで自分の銀行口座から直接買い物や飲食などの支払いができるし、口座間の送金も簡単にできる。面倒な口座番号は不要で、利用金額は即座に銀行口座に反映される。2012年のサービス開始から5年で今や国民の半数以上が「Swish」を利用しているという。
アジア大国の中国ではこうだ。中国のスマホ決済は大きく2系統があり、電子商取引大手のアリババ系の「支付宝(アリペイ)」と、IT大手の騰訊(テンセント)系の「微信支付(WechatPay)」、それぞれ専用アプリを用いて決済を行っている。
ではこれら運営会社にとっては莫大なマーケティング費用を投じた価値は何なのか?その答えは言わずもがな、「ビッグデータ」にあるわけだ。日本政府はこういった価値を重要視できていない気がする。聞き飽きた感のあるビッグデータだが、中国IT業界ではスマホを通じて収集された大量のデータによって次々と革新的サービスが生み出されている。
インドでは、高額紙幣の2種類(日本でいう一万円札、五千円札)がいきなり政府の宣言により廃止された。当初国内では、大混乱に陥り、インド経済は一瞬にしてストップ。しかし意外と早く事態は収束したらしい。
海外各国に比べて、日本は動きが遅い。キャッシュレス後進国とも言われている。
訪日客にアンケートを取ったところ、日本に訪れて一番驚いた、不満だったことは「カードが使えない場所が多い」とも挙げられている。逆に海外では、現金を出すと嫌がられるほどだ。
では、何故日本ではキャッシュレス化が進まないのか?
「日本では偽札の流通がほぼなく、現金が信用されている」、「加盟店手数料が高いためクレジットカード加盟店が普及しづらい」、「現金で決済が終了するので、現金の匿名性が重宝されている」、「決済会社・方法が乱立しており、主要な決済サービスが生まれづらい」
等があげられる。
では、キャッシュレス化が進まないことによる、日本のデメリットは何か?
「少子高齢化が進む日本では現金決済は人手が必要となり、人手不足の解消につながらない」、「日本では年間1兆円も、現金決済の維持にコストがかかる」、「無人コンビニなどの新しいイノベーションが誕生しづらい」、「訪日外国人の決済の利便性」、「現金決済のレジ待ち」、「クレジットカードなどのポイント還元のメリットを消費者が享受できない」
等、もっと沢山ある。
もはや、キャッシュレス化が進まないことは国の将来を不安にさせている。
そもそも、「未来投資戦略2017」で掲げられている2027年6月までの今後10年(未来投資戦略2018では2025年6月までと改訂)でキャッシュレス比率を40%程度、というタームに問題があるのではないかと思う。それは、現時点での海外各国との比較を見ると、差は明らかであるのに対し、その期間で40%だと現状と同じ後追いとはなんら変わりない。
この遅れをどのように巻き返すのか、今後の日本の発展を大きく左右するであろう”何か”に期待が高まる。とはいえ、日本のステレオタイプが払拭されるのは、まだまだ時間がかかりそうだ。