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フランスのモビリティ・スタートアップ・エコシステムが急速に拡大している。2023年のモビリティ系スタートアップの売上高は約14億ユーロに達し、前年比39%増という高成長を記録した。同年の資金調達総額も約7.5億ユーロに上り、アーリーステージからグロースステージまで幅広い段階で投資が活発化している。こうした動きを背景に、フランスは英国に次ぐ欧州第2位の交通イノベーション拠点としての地位を確立しつつある。

環境規制とスマートシティ政策が後押しするMaaS市場

フランス政府と自治体は、交通渋滞や大気汚染、CO2削減目標の達成に向けて、低炭素交通政策を積極的に推進している。特にパリ地域では、交通当局Île-de-France Mobilitésが公共交通と民間モビリティ事業者を統合するMaaS(Mobility as a Service)戦略を展開し、「公共交通と民間サービスのハブ」としてのプラットフォーム構築を進めている。

MaaS市場は2025年から2032年にかけて年平均20%を超える成長が見込まれており、スマートフォンの普及拡大とサステナビリティ志向の高まりが市場拡大の主要因となっている。こうした政策・市場環境が、環境負荷の低減と都市交通の効率化を両立させるスタートアップの成長を後押ししている。

注目すべきフランス発モビリティ・スタートアップ

HysetCo:水素モビリティのフルパッケージ提供

水素モビリティ企業HysetCoは、タクシーなどプロフェッショナル向けに水素車のリース、保険、メンテナンス、燃料供給を一括提供するビジネスモデルを展開している。24時間稼働する水素ステーションネットワークを運営し、ゼロエミッション車両の普及をインフラ面から支える点が特徴だ。水素技術への関心が高まる中、実用性とスケーラビリティを両立させたモデルとして注目を集めている。

Cosmobilis:総合モビリティプラットフォーム

パリを拠点とするCosmobilisは、オンライン教習サービス「En Voiture Simone」、フレキシブルなカーシェア・レンタル「UCAR」、新車・中古車マーケットプレイス「BYmyCAR」を束ねる総合モビリティグループだ。フランス、スイス、スペイン、イタリアに675拠点を展開し、200万人を超える顧客基盤を持つスケールの大きさが強みとなっている。

インパクト志向のモビリティ・スタートアップ

Bpifrance Le HubやFrance Digitaleが発表する2025年インパクトマッピングでは、モビリティ分野で「French Startups with Impact」として選出されるスタートアップが増加している。HyG Motorsなどに代表されるこれらの企業は、SDGsを意識した低炭素型モビリティだけでなく、地方や高齢者、免許非保有者といった移動制約を抱える層の課題解決にも取り組んでいる。社会包摂型のアプローチが評価されている。

公的支援と欧州投資プラットフォームの連携

フランスのモビリティ・エコシステムを支えるのは、公的機関と欧州レベルの投資プラットフォームの連携だ。

国営投資銀行Bpifranceは、グリーンテック・モビリティ分野の主要投資家として、成長資金の提供とアクセラレーション支援を行っている。一方、Île-de-France Mobilitésは規制面やデータ連携、インフラ整備を通じてスタートアップとの協働を進め、MaaSエコシステムの形成を主導している。

欧州レベルでは、EIT Urban Mobilityがフランス国内で15社のモビリティ・スタートアップを支援しており、Bpifranceに次ぐ「モビリティトランジション投資家」としての存在感を示している。2022年から2023年にかけてモビリティ分野の資金調達は12%増加し、実証段階からスケール段階へと移行するスタートアップが増えている。

日本企業にとっての示唆

フランスのモビリティ・エコシステムには、日本企業にとって複数の協業可能性が見込まれる。

水素・EVインフラ分野では、日本の自動車メーカーやエネルギー企業が持つ技術・ノウハウとの連携が考えられる。MaaSプラットフォームにおいては、公共交通データの連携やAPI統合のノウハウが活用できる可能性がある。さらに、高齢化や地方の移動課題といった社会的テーマは日本とフランスで共通しており、インパクト志向のモビリティソリューションは日本市場への転用可能性も高い。

三位一体で動くエコシステムの強み

フランスのモビリティ・エコシステムの最大の特徴は、公共交通当局、スタートアップ、インパクト投資家が三位一体で動いている点にある。規制当局がオープンデータやインフラ整備で環境を整え、民間のイノベーションを促進し、投資家が社会的リターンも重視しながら資金を供給する──この循環が、欧州第2位のポジションを支える原動力となっている。

環境負荷の低減と都市交通の効率化という世界共通の課題に対し、フランスは政策・ビジネス・投資の三者連携による独自のアプローチを確立しつつある。今後も、この市場の動向は欧州全体のモビリティ・イノベーションを占う上で重要な指標となるだろう。

毎週水曜日、5社の注目スタートアップが登壇する
ピッチイベント!earthkey pitchのご案内

イベント概要

earthkeyが主催するオープンイノベーションイベントです。
業界業種にこだわらず、毎週5社の新進気鋭のシード・アーリーステージのスタートアップ企業が、事業会社との共創や投資家との出会いを目的に登壇します。業界を越えた業務提携や資本提携など毎回数々のマッチングが生まれる場です。事業会社の方は参加いただくことで、自社の新規事業の推進や自社課題(ワークフローのデジタル化など)の解決、クライアントへの付加価値提案などのアイデアを得ることができます。当イベントは、業界業種に縛られないセレンディピティ(偶然の出会い)の場を大切にしています。

相性の良い参加者像

・事業会社(新規、既存事業推進者・経営企画室)
・ベンチャーキャピタル
・コーポレートベンチャーキャピタル
・メディア関係会社

*過去参加企業(敬称略)
伊藤忠商事、三井物産、NEC、三井住友FG、みずほ銀行、凸版印刷、電通、JCB、フジテレビジョン、
​三井住友海上、京セラ、楽天、日清紡HD、東芝、ALSOK 、GMOTECH、
京浜急行電鉄、東京建物、富士通、DNP、参天製薬、等

タイムスケジュール

15:45- zoomLIVE配信開始
15:50- イベント運営紹介、ピッチ概要説明
16:00- 1社目
16:11- 2社目
16:22- 3社目
16:33- 4社目
16:44- 5社目
16:55- クロージング
17:00- 終了

参加(視聴)費用

・無料

イベントについての注意事項

※登壇企業さま・弊社との事業が競合する企業さま、
事業会社に属されていない方からのお申し込みをお断りする場合がございます
※タイムスケジュールや登壇社は予告なく変更になる場合がございます
※参加者の企業名・部門名のみ、プレゼンテーションの質向上のため登壇企業さまへ共有することがございます
※本イベントはZoom(ウェビナー)を活用したフルオンラインのLIVE配信となります為、当日配信品質の問題が発生する可能性がございます。何卒ご了承くださいませ

視聴をご希望の方は下記リンクよりお申し込みください。

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