教育現場では近年、「学びの個別化」や「オンライン化」が進む一方で、新たな課題が浮上しています。
それは——学習者の孤立とエンゲージメントの低下です。特に大学など高等教育機関では、学生同士の交流や教員との対話の機会が減少し、学習のモチベーション維持が困難になっているという声が多く上がっています。従来のLMS(学習管理システム)では、講義資料の配布や課題提出といった“管理”機能に偏り、「学び合い」「関わり合い」という人間的要素が欠落していました。このような背景のもと、教育にソーシャルグラフの概念を持ち込んだのが、米国発スタートアップ Yellowdig(イエローディグ)です。
目次
1.Yellowdigとは?
設立:2015年
本社:米国デラウェア州
事業内容:教育機関向けのソーシャル学習プラットフォームを開発・提供
Yellowdigは、大学・高等教育機関を中心に、学生同士の対話・協働を促す“エンゲージメント・ネットワーク”を構築するプラットフォームです。
◆ キーワードは「Learning Communities(学びのコミュニティ)」
Yellowdigは、授業ごとに独立した“学習コミュニティ”を構築し、そこに学生・教員が投稿、コメント、リアクションなどを通じて双方向に関わる場を提供します。この仕組みは、FacebookやSlackのようなSNS的なUXと、教育現場のニーズを融合したもの。教員は管理者として活動を“監視”するのではなく、“ファシリテーター”として学習をガイドします。

2.どのように課題を解決しているか?
1. ゲーミフィケーションを活用したエンゲージメント設計
Yellowdigでは、投稿やコメントなどの行動にポイントが付与されるシステムを導入。
これにより、「やらされる学び」から「参加したくなる学び」への転換を実現しています。
2. LMSとのシームレスな統合
Canvas、Blackboard、Moodleなどの既存LMSとの連携が可能。
そのため導入ハードルが低く、教員・学生ともにスムーズに活用可能です。
3. 自然言語処理を活用した学習分析
学生の投稿を分析し、トピックの関連性や学習の深まりを可視化。
これにより、教育者は「どの学生が孤立しているか」や「どの話題が活発か」を把握しやすくなります。
3今後の成長可能性と注目ポイント
第一に、ハイブリッド型教育の定着が挙げられます。コロナ禍を契機にオンライン教育が広く普及した一方で、対面授業の価値も見直されており、今後は両者を組み合わせた学習スタイルが主流になると見られています。その中で、非同期かつソーシャルなコミュニケーションを促すYellowdigのようなプラットフォームは、教育機関にとって重要なインフラとなる可能性があります。
第二に、高等教育機関以外への展開可能性です。すでに大学での実績を積み重ねつつあるYellowdigですが、今後は企業内の研修やリスキリングプログラムなど、成人教育・継続教育の分野においても活用の幅が広がると予想されます。特にグローバル企業においては、言語や文化を越えて知識共有を行う仕組みが求められており、Yellowdigのような“つながる学習”基盤へのニーズは高まっています。
第三に、AIとの連携による学習最適化の進展が見込まれます。Yellowdigはすでに自然言語処理技術を取り入れた分析機能を搭載していますが、今後は個々の学習者の投稿履歴や関心傾向をもとに、対話のきっかけを自動で提案したり、教員に適切な介入タイミングを提示するような機能の強化が期待されています。これにより、単なるSNS型プラットフォームから一歩進んだ「インテリジェントな学習コミュニティ基盤」への進化が現実味を帯びてきています。
4.学びを「ひとり」にしない技術
Yellowdigは、「人は人と学ぶ」ことの価値を、テクノロジーによって再定義するスタートアップです。
学習者を“孤独な受講者”から“つながる参加者”へと導くこの仕組みは、今後の教育のスタンダードとなる可能性があり、未来の教室では、コンテンツよりも「関係性」が主役になるかもしれません。
参考:https://www.yellowdig.co/
https://500.co/portfolio?industry=all®ion=all&stage=Seed&country=all&bModel=all&batch=all&&page=82&sort=alphabetically#companies-table
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