eコマースの急成長が続くアジア市場において、物流の効率化はあらゆるプレイヤーにとって喫緊の課題となっています。特に「ラストワンマイル」、すなわち消費者の手元に商品が届く最終工程は、多くのコストと混乱を伴うボトルネックとなっています。こうした課題に真正面から取り組んでいるのが、マレーシア発のスタートアップ企業 Allsome(オールサム) です。
目次
1.企業概要と創業の背景
Allsomeは2018年にマレーシアで設立されたB2B向け物流ソリューション企業で、中国の倉庫ネットワークと統合したクロスボーダーの荷物追跡・管理システムを開発・提供しています。共同創業者のYeoh Shen Jie氏とWong Kah Meng氏は、東南アジアの中小eコマース事業者が直面する「物流の不透明性と非効率性」に課題を感じたことをきっかけにAllsomeを立ち上げました。
同社のビジョンは、アジアの中小規模事業者が大手と同様の物流インフラを持たずとも、スケーラブルに事業を展開できる環境を整えることです。
2.ビジネスモデル:倉庫+追跡+顧客接点の統合
Allsomeのビジネスモデルは、以下の3層で構成されています。
倉庫・フルフィルメンの統合:中国・広州を中心に提携倉庫を持ち、アジア地域向けの出荷を効率化します。
荷物追跡・可視化システム:中小事業者でも利用できるSaaS型の追跡ツールを提供しています。
ブランド向けの顧客通知機能:顧客にリアルタイムで配送状況を通知し、ブランド体験を向上させます。
この垂直統合モデルにより、Allsomeは従来サイロ化されていた物流プロセスを一元化しています。特に中小事業者にとって、「低コストかつ導入の容易な追跡・管理機能」が強みとなっています。
3.テクノロジーと差別化要因
Allsomeの競争優位性は、「簡易なAPI連携で多言語・多通貨対応の配送体験を提供できる」点にあります。
特に以下の特徴が差別化要因となっています。
- ノーコード/ローコード設計:非エンジニアでも導入が可能です。
- 20か国以上の配送業者と統合済み:アジア域内での高い対応力を有しています。
- AIによる配送遅延予測:ユーザーに事前通知を行い、カスタマーサポート対応の負荷を軽減します。
このような技術によって、Allsomeは物流の「透明性」と「トラッカビリティ」を中小eコマース事業者にもたらしています。
4.市場戦略と成長フェーズ
Allsomeは当初、マレーシアとシンガポールを中心にサービスを展開していましたが、現在はインドネシア、フィリピン、タイなどの新興市場へ進出しています。これらの国々ではeコマースが急成長している一方で、物流インフラは未整備な部分が多く、Allsomeのようなソリューションへのニーズが高まっています。
さらに、2021年には中国の物流企業とパートナーシップを強化し、クロスボーダーEC対応も本格化しました。D2Cブランド支援にも注力しており、物流以上の価値提供を模索しています。
5.資金調達と今後の展望
Allsomeは2022年時点でシードおよびプレシリーズAラウンドで複数のベンチャーキャピタルから資金を調達しています。主な投資家にはEast VenturesやAlpha JWC Venturesなど、東南アジアの有力VCが名を連ねています。
今後は以下の3つを成長戦略として掲げています。
- AI・ビッグデータを活用した配送最適化
- ブランド向け顧客体験の強化(トラッキング・通知UX)
- サプライチェーンマネジメント機能の拡充
7. 総括:Allsomeが描く物流の未来
Allsomeは、「ラストワンマイル」の非効率性という構造課題に対し、SaaSと物流インフラを融合させた実践的な解決策を提示している、数少ない東南アジア発のスタートアップ企業です。
中小規模の事業者にとって、Allsomeは単なる物流パートナーではなく、「ビジネススケーリングの基盤」となり得る存在です。今後、東南アジア域内でのさらなる拡張や、サプライチェーン全体を視野に入れたプロダクト開発が進めば、Allsomeは域内物流のキープレイヤーとして台頭する可能性を秘めています。
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