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現代の企業において、従業員エンゲージメントや生産性の向上は最重要課題の一つです。
その解決策として「食」を通じた福利厚生が注目されていますが、従来の手法には多くの課題が存在しました。

  • 管理部門の負担増大
    毎日の食事手配は、担当者にとって大きな負担となり、レストランの選定、メニューの調整、アレルギー対応、予算管理、発注、請求処理など、業務は多岐にわたります。
  • 従業員の満足度低下
    同じようなメニューの繰り返しや、個々の好み・食事制限(ベジタリアン、ハラルなど)に対応できないことから、従業員の満足度が低下し、福利厚生としての価値が薄れてしまうケースが多く見られます。
  • 品質とコストのばらつき
    外部のケータリングサービスやデリバリーに頼る場合、品質が安定せず、コストも割高になりがちです。特に、複数のベンダーとやり取りをすると、管理はさらに煩雑になります。

これらの課題は、企業が「食」の福利厚生を効果的に活用する上での大きな障壁となっていました。

1.Zerocaterの概要と特徴

Zerocaterは、これらの課題をテクノロジーの力で解決する、法人向けの「食」に特化したプラットフォームです。単なるケータリング手配サービスではなく、「食の福利厚生」を総合的にマネジメントするソリューションを提供しています。

  • マネージド・マーケットプレイス
    厳選した地元のレストランやケータリング業者と提携し、質の高い多様な食事を提供。
    企業側は、Zerocaterという単一の窓口を通じて、様々な飲食店のメニューをシームレスに利用可能。
  • AIによるパーソナライゼーション
    従業員一人ひとりの食の好みやアレルギー情報を収集・分析し、AIが最適なメニューを提案。
    フィードバックを繰り返すことで、メニューのパーソナライゼーション精度は向上し、従業員満足度を高めます。
  • 一元管理プラットフォーム
    予算管理、スケジュール調整、フィードバック収集、請求処理まで、すべてのプロセスを専用のダッシュボードで一元管理可能。
  • 柔軟な提供形態
    オフィスでの毎日のランチ提供だけでなく、軽食やスナックを揃える「Office Kitchen」の管理、またハイブリッドワークに対応した個別のミールクレジット提供など、企業の働き方に合わせた柔軟なサービスを展開。

Zerocaterは、テクノロジーを活用して「手配の自動化」と「食体験のパーソナライズ」を両立させ、企業と従業員の双方にとって価値のあるサービスを実現しています。

2.競合優位性と市場での位置付け

法人向けフードデリバリー市場には、ezCaterやDoorDash for Workといった競合が存在します。その中で、Zerocaterは以下の点で独自のポジションを築いています。

  • 「キュレーション」と「マネジメント」への特化
    多くの競合がオンデマンドの「デリバリープラットフォーム」であるのに対し、Zerocaterは長期的なパートナーとして企業の食環境を総合的に設計・管理する「マネージドサービス」である点が最大の違いです。単に食事を届けるだけでなく、データに基づいて食体験そのものを改善し続けることに強みがあります。
  • データドリブンなアプローチ
    従業員のフィードバックデータを活用し、メニューの改善や満足度の可視化を行います。これにより、企業は福利厚生への投資対効果(ROI)を客観的に把握できます。
  • 高品質なベンダーネットワーク: 安さや速さだけでなく、地域の人気店や質の高いベンダーを厳選してネットワークに加えることで、一貫して高いレベルの食体験を提供しています。

市場において、Zerocaterは「プレミアム・フルサービスプロバイダー」として位置付けられています。単発のイベント利用ではなく、企業のカルチャーや働き方に深く根ざした「食のインフラ」を構築したいと考える企業にとって、第一の選択肢となる存在です。

3.現在の成長段階と今後の展望

2009年に設立されたZerocaterは、スタートアップとしては比較的長い歴史を持ち、すでに成熟期に入っています。これまでにSalesforceやCisco、Figmaといった名だたる企業を顧客に抱え、全米の主要都市でサービスを展開しています。

近年のパンデミックを経て、同社のビジネスモデルは大きな転換期を迎えました。リモートワークやハイブリッドワークが主流になる中で、オフィスへの一括提供だけでなく、従業員の自宅へ食事を届けたり、ミールクレジットを付与したりする「ハイブリッドワーク向けソリューション」を強化しています。

今後の展望としては、提供サービスの多角化の一環で食事だけでなく、コーヒー、スナック、飲料など、「オフィスにおける食」全般をカバーする「Food-as-a-Service」モデルをさらに推進していくと予想されます。また、蓄積された膨大な食事データを活用し、従業員の健康管理や生産性との相関分析など、より付加価値の高いインサイトを企業に提供する可能性があります。
働き方の多様化に適応しながら、「食」を軸とした従業員体験の向上という普遍的なニーズに応え続けることで、持続的な成長が期待されています。

4.日本での類似企業

日本においても、働き方の多様化や健康経営への関心の高まりを背景に、法人向けの「食」サービス市場は活況を呈しています。

nonpi (ノンピ)
ケータリングや社食サービスに加え、オンライン懇親会向けのフードデリバリーなど、Zerocaterと同様にハイブリッドな働き方に合わせた多様なサービスを展開しています。

シャショクル
オフィス向けの弁当宅配サービスとして知られていますが、近年は設置型の「社食DELI」など、提供形態を多様化させています。

ごちクル
デリバリー型の社食サービスや、イベント向けのケータリング、さらには食事補助チケットなど、幅広いニーズに対応しています。

5.総括

Zerocaterは、テクノロジーとデータを駆使して、社食・ケータリング業界が抱えていた課題に対して新たな切り口で解決に挑むスタートアップ企業です。管理部門の負担を劇的に軽減すると同時に、個別化された食体験を通じて従業員満足度を最大化するそのモデルは、まさに現代の企業が求める福利厚生の形を体現しています。 働き方が多様化し、優秀な人材の獲得競争が激化する中で、「食」を通じて企業文化を醸成し、従業員との絆を深めるというZerocaterのアプローチは、国や市場を問わず、今後の企業の成長戦略においてますます重要な役割を担っていくことになるでしょう。

参考:https://zerocater.com/
   https://www.ycombinator.com/companies/zerocater
   

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