アメリカの退職準備制度である401(k)プランは、多くの企業で採用されている重要な福利厚生制度です。しかし、特に中小企業においては導入・運営の負担が大きく、従業員の十分な資産形成を阻む様々な課題が存在します。こうした業界の構造的問題に対し、テクノロジーを活用した革新的なソリューションで挑んでいるのが、サンフランシスコ発のスタートアップ「Human Interest(ヒューマンインタレスト)」です。
米国401(k)制度が抱える深刻な課題
米国の401(k)制度において、中小企業が直面する最大の課題は管理コストと運営リソースの確保です。従来の401(k)プラン導入には、専門的な知識を持つ人材の確保、複雑な管理業務、高額な運営費用が必要でした。特に従業員数が少ない中小企業では、入出金管理、加入・脱退の記録管理、従業員への説明責任などの業務負担が重く、導入を躊躇するケースが後を絶ちません。
米国では401(k)への加入は従業員の自発的意思に委ねられているため、全体の加入率は約74%にとどまっています。さらに深刻なのは、若年層や低所得層での加入率が半数以下という現実です。この格差は将来の資産形成における社会的不平等を拡大させる要因となっています。
確定拠出型である401(k)では、拠出率や運用商品の選択が加入者個人の判断に委ねられています。しかし、多くの加入者が適切な拠出率の設定や運用商品の選択について十分な知識を持たないため、結果として不十分な資産形成に陥るケースが多発しています。
特に若年層や転職時において、401(k)残高が少額の場合に早期引き出しを行うケースが多く見られます。これは本来の退職準備という長期的目的から逸脱し、将来の経済的安定を損なう結果を招いています。
確定給付型から確定拠出型への移行により、退職後の資産形成リスクが企業から個人へと転嫁されました。この変化は、個々の従業員により大きな責任と不確実性を押し付ける結果となっており、社会全体の課題として認識されています。
Human Interestのサービス概要
Human Interestは2015年、ポール・サワヤとロジャー・リーによってカリフォルニア州サンフランシスコで設立されました。同社は企業向けに従業員の経済的将来をサポートする包括的な退職制度を、テクノロジーと自動化により提供しています。
2024年には企業価値13.3億ドル(約2,000億円)に到達し、同年だけで2.67億ドルを調達しました。設立以来の総調達額は7億ドルを超え、マーシャル・ウェイスやベイリー・ギフォードなどの著名な投資家から支援を受けています。既にユニコーン企業(企業価値10億ドル超の未上場企業)の仲間入りを果たしており、将来の上場も視野に入れた事業展開を行っています。
Human Interestの最大の特徴は、従来の401(k)プラン管理における複雑な業務をテクノロジーで自動化し、企業の負担を大幅に軽減している点です。SaaSモデルによるサービス提供により、中小企業でも手軽に高品質な退職プランを導入できる環境を実現しています。
企業の管理者は、従来必要だった専門知識や大量の事務作業から解放され、より戦略的な人事施策に集中できるようになります。また、コストも従来型のサービスと比較して大幅に削減されており、これまで401(k)導入を諦めていた中小企業にも門戸が開かれました。
従業員側においても、Human Interestのプラットフォームは直感的で使いやすいユーザーインターフェースを提供しています。複雑だった拠出率の設定や運用商品の選択プロセスが簡素化され、適切な退職準備を行いやすい環境が整備されています。
また、個人の状況に応じたアドバイスや自動化機能により、従業員が十分な知識を持たない場合でも適切な資産形成を行えるようサポートしています。これにより、従来課題となっていた加入率の低さや不適切な運用選択といった問題の解決に貢献しています。
Human Interestは単なるプラットフォーム提供にとどまらず、企業と従業員双方に対する包括的なサポートを提供しています。導入時の設定支援から継続的な運用アドバイスまで、401(k)プランの全ライフサイクルをカバーする体制を構築しています。
業界への影響と今後の展望
Human Interestは、金融サービスと人事テクノロジーを融合させた代表的な企業として、業界のイノベーターと評価されています。同社の成功は、従来の金融機関では対応が困難だった中小企業市場において、テクノロジーを活用したアプローチが有効であることを証明しています。
同社のサービス拡大により、これまで401(k)プランを導入できなかった多くの中小企業とその従業員が退職準備制度にアクセスできるようになっています。これは、米国全体で約30%の労働者が企業年金を利用できないという社会的課題の解決に直結する成果といえるでしょう。
Human Interestの成功は、従来型の401(k)サービスプロバイダーにも変化を促しています。より使いやすく、コストパフォーマンスに優れたサービスの提供が業界全体で求められるようになり、競争の激化により最終的には企業と従業員の双方がより良いサービスを享受できる環境が整いつつあります。
・企業概要
企 業 拠 点 :サンフランシスコ、米国
設 立 年 月 日:2015年
資金調達総額:8億1,460万ドル
fund Stage :シリーズE
主 要 投 資 家:ブラックロック、アルムナイ・ベンチャーズ、Yコンビネーター、スロー・ベンチャーズ
アンコーク・キャピタル
従 業 員 数 :501-1000名

毎週水曜日、5社の注目スタートアップが登壇する
ピッチイベント!earthkey pitchのご案内
イベント概要
earthkeyが主催するオープンイノベーションイベントです。
業界業種にこだわらず、毎週5社の新進気鋭のシード・アーリーステージのスタートアップ企業が、事業会社との共創や投資家との出会いを目的に登壇します。業界を越えた業務提携や資本提携など毎回数々のマッチングが生まれる場です。事業会社の方は参加いただくことで、自社の新規事業の推進や自社課題(ワークフローのデジタル化など)の解決、クライアントへの付加価値提案などのアイデアを得ることができます。当イベントは、業界業種に縛られないセレンディピティ(偶然の出会い)の場を大切にしています。
相性の良い参加者像
・事業会社(新規、既存事業推進者・経営企画室)
・ベンチャーキャピタル
・コーポレートベンチャーキャピタル
・メディア関係会社
*過去参加企業(敬称略)
伊藤忠商事、三井物産、NEC、三井住友FG、みずほ銀行、凸版印刷、電通、JCB、フジテレビジョン、
三井住友海上、京セラ、楽天、日清紡HD、東芝、ALSOK 、GMOTECH、
京浜急行電鉄、東京建物、富士通、DNP、参天製薬、等
タイムスケジュール
15:45- zoomLIVE配信開始
15:50- イベント運営紹介、ピッチ概要説明
16:00- 1社目
16:11- 2社目
16:22- 3社目
16:33- 4社目
16:44- 5社目
16:55- クロージング
17:00- 終了
参加(視聴)費用
・無料
イベントについての注意事項
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