インドは世界有数の農業大国でありながら、そのサプライチェーンには長年にわたり非効率性が残されています。こうした課題に真正面から取り組むスタートアップが「Farmart(ファーマート)」です。本記事では、Farmartのビジネスモデル、これまでの成長の軌跡、資金調達状況、そして今後の展望について多角的に分析します。
目次
1.農家と小売業者を繋ぐB2Bプラットフォーム
Farmartは、農村部の中小規模の小売業者(いわゆる“アグリリテール”)と農家をつなぎ、農業関連商品や資材を効率的に供給するB2Bプラットフォームを展開しています。従来、農家が農業資材を購入するには、都市部の卸業者を通じて複雑な物流を辿る必要があり、価格の不透明さや納期の不安定さといった問題が常につきまとっていました。
Farmartはこのサプライチェーンをデジタル化し、農家がより近隣の信頼できる小売業者から、迅速かつ適正価格で商品を入手できる環境を整えています。また、小売業者に対しては、発注・在庫管理・顧客管理といった機能を備えた専用アプリを提供し、オペレーション全体の効率化を支援しています。

2.成長の軌跡と資金調達状況
Farmartは2016年に設立され、徐々にインド北部を中心に展開地域を広げてきました。設立当初はB2C型のサービスとして農家に直接商品を届けるモデルを模索していましたが、農村部の小売業者を起点とするB2Bモデルへの転換に成功し、急速に成長軌道に乗りました。
これまでの資金調達総額は約400万ドルに達しており、2021年にはGeneral CatalystやOmnivoreなど複数の著名な投資家からプレシリーズAラウンドで資金を獲得しました。これらの資金は、主にテクノロジー開発、地域拡大、物流ネットワークの強化に充てられています。
3.現在の成長段階と事業スケール
Farmartは現在、プロダクト・マーケット・フィットを達成し、スケーラビリティのフェーズで、2023年時点で、同社のプラットフォームには3,000以上の農村小売業者が登録しており、累計で100万以上の農家が間接的にサービスを利用したと報告されています。
Farmartの「ライトアセット型」ビジネスモデルは物流や在庫の大部分を既存の小売業者に任せることで、資本投資を抑えつつ、ネットワーク効果を最大化する構造を実現しています。これは、FlipkartやUdaanなどインドの他の成功スタートアップにも共通するアプローチですが、Farmartはそれを農業分野に最適化している点が特徴です。
4.今後の展望:農業サプライチェーンのOSを目指して
Farmartのビジョンは、単なるB2Bコマースプラットフォームにとどまりません。同社は「農村小売業者のOS(オペレーティングシステム)」を構築することを掲げ、POS(販売時点情報管理)機能や与信管理、マーケティング支援機能の提供も視野に入れています。
加えて、農家とのデータ接点を拡張することで、農業金融や保険といったアグリファイナンス領域への進出も見込まれており、今後の多角化が期待されています。中長期的には、東南アジアやアフリカといった他の農業新興市場への展開も可能性として語られており、グローバルなインパクトを持つ企業へと成長するポテンシャルを秘めています。
5.総括
Farmartは2016年にインドで設立されたスタートアップであり、農家と農村部の小売業者を繋ぐB2Bプラットフォームを提供しています。これまでに約400万ドルの資金を調達し、主にテクノロジー開発と事業拡大に活用してきました。2023年時点で3,000以上の小売業者がプラットフォームに参加し、累計で100万以上の農家に間接的なサービスを提供しています。
同社は、農村小売業者向けにPOS機能や在庫管理機能を備えたアプリを展開しており、農業サプライチェーンの効率化を推進しています。今後は、アグリファイナンスやマーケティング支援などの周辺領域にも事業展開を計画しており、他の新興市場への拡大も視野に入れています。
参考:https://www.farmart.co/
https://500.co/portfolio?industry=all®ion=Southeast%20Asia&stage=all&country=all&bModel=all&batch=all&&page=3&sort=alphabetically#companies-table
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